パスハの讃詞(パスハのさんし、英語: Paschal troparion)とは、正教会の復活大祭の当日、および復活祭期に歌われる祈りである。冒頭の句をとって「ハリストス死より復活し」などと呼ばれる場合もある。
イイスス・ハリストス(イエス・キリストのギリシャ語読み)の復活と、それによって人類に与えられた永遠の生命についての教えを簡潔かつ明瞭にまとめて知らせる内容となっており、正教会で最大の祭りである復活大祭では繰り返し歌われる。
呼称
日本正教会では祈祷書『五旬經略』には"「パスハ」の讃詞"と記載されている。なお讃詞は、ロシア語(Тропа́рь、語源はギリシア語:Τροπάριον)からそのまま転写して「トロパリ」とも呼ばれているため、本記事で扱う讃詞は「パスハのトロパリ」とも呼ばれる。
パスハの讃詞に限らず、正教会(のみならず他教派でもこうした習慣は同様であるが)での祈祷文の題名には冒頭の句がそのまま用いられる場合も多い(『天の王』など)。この事から、題名として「ハリストス死より復活し」と記載される場合もある。ほかに「復活祭の発放讃詞」とも。
「復活讃詞」と記載された楽譜なども存在するが、復活讃詞は広義には主日(日曜日)に歌われる八調(週替りの8つの旋律類型によって系統づけられる体系)の讃詞など様々なものを指すので、本記事で扱う讃詞を特に扱う場合には「パスハの讃詞」が明瞭な呼称となる。
各国語での呼称
様々な呼び名があるが、祈祷の冒頭の句が題名として用いられる事が多い。祈祷の冒頭の句を用いた場合の題名表記例は以下の通り。
- ギリシア語: Χριστὸς ἀνέστη
- ロシア語: Христосъ воскресе
聖歌
パスハの讃詞は多くの場合、単に唱えられるのではなく歌われる。
祈祷書においては八調の第五調で歌うようにとの指定がなされているが、第五調で歌われる事はまず無い。日本を含めた全世界の正教会において、地域ごとに伝統的な旋律が継承されている。曲はバリエーションに富んでいるほか、各修道院に伝統的に継承されてきた旋律・歌唱も存在する。また、特にスラヴ系正教会(ロシア正教会、ブルガリア正教会など)、ルーマニア正教会、さらに西欧・米国などの正教会では、近世以降の作曲家によるパスハの讃詞も存在する。
歌われる時
復活大祭当日には何度も繰り返し歌われる。
復活祭期(復活大祭から40日間)には、「天の王」の代わりに教会関連の各種集会の始まりに歌われるほか、徹夜祷・聖体礼儀をはじめとした各種奉神礼の指定箇所で本讃詞が歌われる。
祈祷文
日本語(日本正教会訳)
各国語の祈祷文
脚注
参考文献
- 『五旬經略』日本正教会・1903年版
- 『復活大祭用聖歌』日本正教会(楽譜集)
- イラリオン・アルフェエフ著、ニコライ高松光一訳『信仰の機密』東京復活大聖堂教会(ニコライ堂) 2004年
関連項目
- パスハ (菓子)
- ハリストス復活 - パスハの挨拶
- 光明週間
- ヘルヴィムの歌
外部リンク
- 主の復活の讃詞(日本語を含めた3ヶ国語) - ウェイバックマシン(2019年1月1日アーカイブ分) - MP3形式で、パスハの讃詞を視聴することが可能




