アカデミー科学技術賞(Academy Scientific and Technical Award, 略称: Sci-Tech Awards)は、アカデミー賞の部門のひとつ。これらは特定の映画に直接関わった賞ではなく、映画に貢献した重要な技術、技術者に対しておくられる賞である。授賞式はアカデミー賞の授賞式よりも早い時期に、晩餐会の形式で行われる。受賞は年にひとつとは限らない。
賞の種類
- Academy Award of Merit - 最高位である、アカデミー・アワード・オブ・メリット。
- Scientific and Engineering Award - 科学工学賞(もしくは 科学技術賞)。
- Technical Achievement Award - 技術成果賞(もしくは 技術貢献賞)。
アカデミー科学技術賞は以上の3賞から成り、アワード・オブ・メリットにはオスカー像が、科学工学賞には盾、技術成果賞には証書がそれぞれ贈られる。以前のクラスI・II・IIIというカテゴリが、1978年から現在の名称に変更された。
授賞式ではさらに2つの名誉賞、ジョン・A・ボナー メダル賞と、ゴードン・E・ソーヤー賞も授与される。
主な受賞者
- 1952年(第25回) - イーストマン・コダック・カンパニーがイーストマン・カラー・フィルムでクラスI(後のアワード・オブ・メリット)を受賞。
- 1982年 - リチャード・エドランド「エンパイア・カメラシステム」
- 1985年 - IMAXコーポレーション
- 1987年 - リチャード・エドランド「ZAP65mmオプチカル・プリンター」
- 1988年(第61回) - ドルビーラボラトリーズのレイ・ドルビーとヨアン・アレン。映画音響への貢献。アワード・オブ・メリットを受賞。
- 1992年 - ダグラス・トランブル
- 1993年 - ピクサー「RenderMan」
- 1993年(第66回) - パナビジョンのアナモフィック・レンズ、Auto Panatar。アワード・オブ・メリットを受賞。
- 1996年(第69回) - IMAXコーポレーションにアワード・オブ・メリット。
- 1998年 - Avid社のノンリニア編集システム
- 1998年 - デジタル・ドメイン
- 2001年 - デジタル・ドメインのNuke
- 2002年(第75回) - Mayaの開発でAlias/Wavefrontがアワード・オブ・メリットを受賞。
- 2004年 - ビル・トンドリアーの開発した「カメラモーションソフト」
- 2006年(第79回) – リチャード・エドランドが、ジョン・A・ボナー メダル賞を受賞。
日本関連
- 宮城島卓夫
日系人でパナビジョンの宮城島卓夫は、アカデミー科学技術賞で5回の表彰を受けており、最後に受賞したゴードン・E・ソーヤー賞でオスカー像が授与されている。(#2004年度 受賞映像)
- 受賞歴
- 1990年(第63回) - 技術成果賞。「35mm映画撮影用の球面プライムレンズ、Primoシリーズの開発」
- 1998年(第71回) - 科学工学賞と技術成果賞を同時受賞。「35mm映画用、Primoシリーズのレンズ」及び「アイピース レベラーの設計と開発」
- 1999年(第72回) - ジョン・A・ボナー メダル賞。
- 2004年(第77回) - ゴードン・E・ソーヤー賞。
ソニーとパナビジョンが共同受賞した2016年度の授賞式では、宮城島についてスピーチで言及された。(#2016年度 受賞映像)
※受賞を太字で記載
- 1972年(第45回) - クラスIII(後の技術成果賞)。キヤノンの向井二郎と広瀬隆昌。「映画撮影用キヤノン・マクロ・ズームレンズの開発」
- 1976年(第49回) - クラスIII(後の技術成果賞)。キヤノンの鈴川博。「映画撮影用の超高速レンズの設計と開発」
- 1978年(第51回) - 技術成果賞。シネファイジャパン(CINE-FI International)の関口喜一。ドライブインシアターで自動車のラジオ・アンテナにクリップでコードを繋いで音声を聴く、CINE-FI(シネファイ)オート・ラジオ・サウンド・システムを開発。
- 1981年(第54回) - アワード・オブ・メリット。富士写真フイルムにオスカー像。「超高速カラーネガフィルムの研究、開発」“フジカラーネガティブフィルムA250”(#1981年度 受賞映像)
- 1990年(第63回) - 科学工学賞。富士写真フイルム。「カラーネガフィルムFシリーズの開発」
- 1995年(第68回) - 科学工学賞。ソニー。「デジタルサウンドシステム、SDDSの設計と開発」
- 2001年(第74回) - 科学工学賞。IMAGICAの塚田眞人と金子昌司。及びIMAGICAの技術スタッフ。Nikonの藤江大二郎。「65/35マルチフォーマットオプチカルプリンター」(#2001年度 受賞映像)
- 2007年(第80回) - 科学工学賞。坂口亮、Dr.ダグ・ローブル、ナフィーズ・ビン・ザフェア(いずれもデジタル・ドメイン)。「流体シミュレーション・ツール『Fsim』」
- 2009年(第82回) - 科学工学賞。富士フイルムと同社の3名、西村亮治、三木正章、細谷陽一。映画用デジタルレコーダー出力専用、フジカラー「ETERNA-RDI」の設計と開発。高精細な映画デジタルマスター映像をより忠実にフィルムへ出力。(#2009年度 受賞映像)
- 2011年(第84回) - 科学工学賞。富士フイルムと同社の3名、白井英行、Dr.大関勝久、平野浩司。映画用デジタルセパレーション用黒白レコーディングフィルム「ETERNA-RDS」(#2011年度 受賞映像)
- 2014年(第87回) - 科学工学賞。ソニーの4名、筒井一郎、武昌宏、田村光康、浅野慎。「業務用有機ELマスターモニター」(#2014年度 受賞映像)
- 2015年(第88回) - 科学工学賞。中垣清介、Jack Greasley、Duncan Hopkins、Carl Rand(いずれもThe Foundry ザ・ファウンドリー社の3DCG用ペイントソフト『MARI』開発メンバー)(#2015年度 受賞映像)
- 2016年(第89回) - 2種類のデジタル映画カメラでソニーが2つの科学工学賞を同時受賞。高解像度イメージセンサーを搭載し、優れたダイナミックレンジ、高精細4Kをスクリーンで実現。自社 CineAlta(シネアルタ)「F65」。並びにパナビジョンとソニーで共同開発した、ジェネシス。(#2016年度 受賞映像)
- 2020年(第93回) - 科学工学賞。三研マイクロホンの小型ラベリアマイク、COS-11シリーズの開発。(#2020年度 受賞スピーチ映像)
- 2020年(第93回) - 技術成果賞。EIZOの4名、上野幸一、米光潤郎、作田淳治、中島賢人。カラーマネージメントモニター「
ColorEdge CGシリーズ」に搭載された自動キャリブレーション技術の開発。ほかにデジタルユニフォミティ補正回路、SDKの提供など。(#2020年度 受賞スピーチ映像) - 2023年(第96回) - 技術成果賞。日亜化学工業の5名、中津嘉隆、長尾陽二、平尾剛、森住知典、髙鶴一真。映画館用のレーザー投影システムに搭載されるレーザー光源、青色・緑色レーザーダイオードの開発と業界全体への普及。(#2023年度 受賞映像)
日本関連の授賞式映像
- Oscars 公式映像
脚注
注釈
出典
外部リンク
- Academy of Motion Picture Arts and Sciences - 映画芸術科学アカデミー公式サイト(英語)
- The Oscars - アカデミー賞授賞式公式サイト(英語)
- Oscar Legacy - アカデミー賞各年の概要(公式サイト)(英語)
- The Official Academy Awards Database - アカデミー賞公式データベース(英語)
- Academy Awards - インターネット・ムービー・データベース (英語)
- アカデミー賞 - allcinema (日本語)




