アラン分散Allan variance)は、時計、発振器、アンプにおける周波数安定度を表す指標である。名前はDavid W. Allanに由来し、数学的には σ y 2 ( τ ) {\displaystyle \sigma _{y}^{2}(\tau )} と表される。 アラン偏差Allan deviation)は、アラン分散の平方根である σ y ( τ ) {\displaystyle \sigma _{y}(\tau )} である。

アラン分散は統計的な安定度を推定するためのものであり、周波数ドリフトなどの系統的な誤差を推定するものではない。また、アラン分散には、修正アラン分散をはじめとするいくつかの派生形がある。

背景

水晶発振器や原子時計の安定性が調べられていた頃、位相ノイズにはホワイトノイズのみならず、フリッカー周波数ノイズも存在しているとわかった。これらのノイズの形は、推定値が収束しないため、標準偏差などの伝統的な統計ツールでは扱いが難しい。安定性を分析する初期の取り組みは、理論的な分析と実用的な測定の両方から行われた。

この問題を解決するため、David AllanはM-サンプル分散を導入し、間接的にアラン分散(2-サンプル分散)を導入した。アラン分散では、全ての種類のノイズを見分けることはできないが、有意義な情報が得られる。IEEEはのちに、M-サンプル分散よりもアラン分散(2-サンプル分散)の方が望ましいとみなした。

定義

振動と位相ノイズ

振動は以下の式で表される。

V ( t ) = V 0 sin ( Φ ( t ) ) . {\displaystyle V(t)=V_{0}\sin(\Phi (t)).}

位相は以下のように表される。

Φ ( t ) = ω n t φ ( t ) = 2 π ν n t φ ( t ) . {\displaystyle \Phi (t)=\omega _{\text{n}}t \varphi (t)=2\pi \nu _{\text{n}}t \varphi (t).}

ν n {\displaystyle \nu _{\text{n}}} は基準となる周波数を表し、 φ ( t ) {\displaystyle \varphi (t)} は位相ノイズを表す。

周波数

瞬間的な周波数は、位相の時間微分で表される。

ν ( t ) = 1 2 π d Φ ( t ) d t . {\displaystyle \nu (t)={\frac {1}{2\pi }}{\frac {d\Phi (t)}{dt}}.}

規格化された周波数偏差

瞬間的な周波数の、基準となる周波数からの偏差を規格化して、以下の量を定義する。

y ( t ) = ν ( t ) ν n ν n = ν ( t ) ν n 1. {\displaystyle y(t)={\frac {\nu (t)-\nu _{\text{n}}}{\nu _{\text{n}}}}={\frac {\nu (t)}{\nu _{\text{n}}}}-1.}

規格化された周波数偏差の時間平均

規格化された周波数偏差の時間平均は以下のように定義される。

y ¯ ( t , τ ) = 1 τ 0 τ y ( t t v ) d t v , {\displaystyle {\bar {y}}(t,\tau )={\frac {1}{\tau }}\int _{0}^{\tau }y(t t_{v})\,dt_{v},}

ここでτは平均化時間を表す。

アラン分散

n番目の周波数偏差を以下のように表すとする。

y ¯ n = y ¯ ( n τ , τ ) {\displaystyle {\bar {y}}_{n}={\bar {y}}(n\tau ,\tau )}

アラン分散は以下のように定義される。

σ y 2 ( τ ) = 1 2 ( y ¯ n 1 y ¯ n ) 2 {\displaystyle \sigma _{y}^{2}(\tau )={\frac {1}{2}}\left\langle \left({\bar {y}}_{n 1}-{\bar {y}}_{n}\right)^{2}\right\rangle }

ただし、 {\displaystyle \langle \dotsm \rangle } は期待値を表す。

アラン偏差

標準偏差と分散の関係と同様に、アラン偏差はアラン分散の平方根として定義される。

σ y ( τ ) = σ y 2 ( τ ) . {\displaystyle \sigma _{y}(\tau )={\sqrt {\sigma _{y}^{2}(\tau )}}.}

べき乗ノイズ

アラン分散は、さまざまなべき乗ノイズを見分けることができる。

アラン分散は、白色位相ノイズとフリッカー位相ノイズを見分けることができない。一方で、修正アラン分散ではこれらを見分けることができる。

線形応答

アラン分散は、位相や周波数に乗るノイズを見分けるためのものである。一方で、位相や周波数の線形な変化に対して依存性を示すことがある。

上の表より、アラン分散は、位相や周波数に定数のオフセットがついても変化しないが、周波数が線形に変化すると影響を受ける。

関連項目

  • 分散
  • 計量学

出典


アラン13年|PayPayフリマ

分散と標準偏差の求め方をイチから!2通りの計算方法をマスターしよう! YouTube

水晶ジャイロセンサーについて(2) SENS‣AITプロジェクト

【分散の基礎から証明まで】なぜ、分散=(2乗の平均)ー(平均の2乗)なの?(数学Ⅰデータの分析) YouTube

아란 (アラン)